| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


自由集会 W17-1  (Workshop)

ササを除去し、時間が経過して、森林の土壌窒素はどう変わったか?【O】
How did soil nitrogen dynamics change at a certain period after the removal of Sasa dwarf bamboo?【O】

*福澤加里部(北海道大学), 智和正明(九州大学), 舘野隆之輔(京都大学), 松山周平(酪農学園大学), 菱拓雄(九州大学), 杉山賢子(京都大学), 谷口武士(鳥取大学), 野村睦(北海道大学)
*Karibu FUKUZAWA(Hokkaido Univ.), Masaaki CHIWA(Kyushu Univ.), Ryunosuke TATENO(Kyoto Univ.), Shuhei MATSUYAMA(Rakuno Gakuen Univ.), Takuo HISHI(Kyushu Univ.), Yoshiko SUGIYAMA(Kyoto Univ.), Takeshi TANIGUCHI(Tottori Univ.), Mutsumi NOMURA(Hokkaido Univ.)

森林においてササ類は林床を覆い、その生産性は樹木に匹敵しうることから、窒素などの物質循環の主要な経路になっている。一方、近年シカ等による林床植生の被食により、ササが消失している地域もある。ササが消失すると森林の物質循環系はどのように変化するのだろうか?本研究では、ササ類の消失が森林土壌の窒素動態に及ぼす中長期的な影響を解明するため、ササを人為的に除去する操作実験を行い、ササ地上部除去開始から時間が経過した森林において、土壌中の無機態窒素量と正味の窒素無機化速度を測定した。
北海道北部の中川、天塩、東部の標茶、足寄にてミズナラを対象木とし、その周囲にササ除去区と非除去区(対照区)を設定した。調査地はササ除去が開始されてから5年から24年が経過している。道北ではクマイザサまたはチシマザサ、道東ではミヤコザサがそれぞれ林床に密生していた。表層10㎝土壌を採取し、アンモニウム態・硝酸態窒素量と無機態窒素量(アンモニウム態窒素量と硝酸態窒素量の合計)、正味のアンモニウム態窒素・硝酸態窒素生成速度およびそれらの合計である窒素無機化速度を測定した。また微生物バイオマス窒素や土壌含水率等の土壌理化学性、有機物(FH)層厚さを測定した。
ササ除去はアンモニウム態窒素量を有意に減少させ、無機態窒素量も減少させる傾向があった。正味の窒素無機化速度はササ除去により低下した。ササ除去区ではFH層厚さは減少し、微生物バイオマス窒素も減少傾向にあった。このことからササ除去によって土壌への有機物供給量が減少し、窒素無機化を担う土壌微生物量が減少して無機態窒素生成量が減少した可能性があり、ササ消失後の無機態窒素量においては無機態窒素吸収に加えて無機態窒素生成の影響も考慮する必要があると考えられた。本研究から、ササ消失は中長期的には土壌の無機態窒素の生成を抑制し、土壌中の無機態窒素量を減少させうることが示された。


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