| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


自由集会 W17-3  (Workshop)

林床の地上部バイオマスの推定に欠かせないパラメータは?〜ササ優占冷温帯林の場合【O】
Essential parameters to estimate the understory vegetation biomass in case of the cool-temperate forests dominated by Sasa species on the understory【O】

*松山周平(酪農学園大学), 智和正明(九州大学), 榎木勉(九州大学), 菱拓雄(九州大学), 杉山賢子(京都大学), 舘野隆之輔(京都大学), 福澤加里部(北海道大学)
*Shuhei MATSUYAMA(Rakunou Gkuen Univ.), Masaaki CHIWA(Kyushu Univ.), Tsutomu ENOKI(Kyushu Univ.), Takuo HISHI(Kyushu Univ.), Yoshiko SUGIYAMA(Kyoto Univ.), Ryunosuke TATENO(Kyoto Univ.), Karibu FUKUZAWA(Hokkaido Univ.)

林床の地上部バイオマスは森林生態系の炭素・窒素動態や生物多様性に影響を与えることがわかってきている。しかし、林床の地上部バイオマスの評価した研究は限られており、森林生態系における林床植生の重要性は必ずしもよくわかっておらず、林床の地上部バイオマスデータの蓄積が求められる。
日本では林床にササ属が優占する森林が各地に見られる。こうした森林における林床の地上部バイオマスの重要性を解明する一助とするために、本研究では、ササが林床に優占する植生の地上部バイオマスの推定に有効なパラメータを検討した。
北海道の5つ調査地において多数のプロットを設定し、ササの地上部バイオマス、植生高、ササの密度、相対光量子束密度(rPPFD)を調べた。さらに異なる地域でササの地上部バイオマスを調べた9つの文献のデータを加えて、ササの地上部バイオマス量と植生高、密度、rPPFD、優占するササの種類、気温・降水量・最大積雪深との関係を分析した。
地上部バイオマスは植生高、密度にともなって増加したが、傾きは種間で異なった。植生高と密度の積は地上部バイオマスを回帰するのに比較的良いパラメータであったが、ミヤコザサ、クマイザサ、チシマザサの種間で傾きは異なっていたことから、ササ属が優占する植生であっても種の識別は必要である。各地の気象統計値と地上部バイオマス量との関係は不明瞭であったが、rPPFDと地上部バイオマスとの間には有意な相関が見られた。
これらの解析の結果から、ササが林床に優占する植生で地上部バイオマスを評価する際には、ササの密度、植生高、rPPFD値のデータをともに蓄積することで、林床の地上部バイオマス量の推定が将来的に容易になるものと考えられた。


日本生態学会