| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
自由集会 W21-3 (Workshop)
里山の主要な景観の1つの広葉樹二次林では、近年利用減少などによる環境変化の中、市民による管理で一部が維持されてきた。しかし伐採等の管理が行われた林で定量的に現状を把握する調査はほとんど行われてこなかった。ここでは現状把握の一環として、里山の植生遷移と関連が深い土壌に焦点をあて、里山に関わる団体と連携して実施した『里山の土壌を知る~市民参加型の全国里山土壌調査~』プロジェクト(PJ)を紹介する。2024年7月から9月にかけて、PJ応募チラシ等を使って里山関連団体へ直接メール案内等で参加を募った。団体からの応募内容を確認し条件に適った場合は、現地調査を正式に依頼し調査キットを送付した。現地調査は、①土壌調査に加えて、土壌と密接に関連する②落葉調査、③樹木組成調査、④樹冠開空度調査、⑤下層植生調査とした。参加者には、PJで作成した手順書や動画の事前確認をお願いした。土壌と落葉は現地で採取したものをPJ本部へ送っていただいた。その他、写真や現地記録データをPJ専用のクラウド上にアップロードしていただているところである。分析は、落葉は養分(窒素等)、土壌は物理化学特性(pH等)と養分、および真菌群集について実施した。参加サイトは33で、北海道から九州にわたっていた。調査地の過去履歴は薪炭林が主であり、現在の植生はコナラ、クヌギ、ミズナラ等であった。また参加主体は里山保全団体が主であった。調査参加の動機は、環境や伐採の影響を知りたい等であった。現在、集まった土壌試料は分析等を進め、現地データ処理等も同時に進めており、データ取得や解析が途中の段階であったが、速報性を優先して、2025年2月にPJ参加者への中間報告会・交流会を行い82名(企画者等を含む)の参加があった。会の中では「土壌に愛着がわいた」や「いろいろな調査をしたくなった」等の意見もあった。本発表では里山に関わる人々との調査連携の在り方などを議論したい。