| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
自由集会 W22-2 (Workshop)
博物館に収蔵される膨大な数の生物標本には、様々な情報が含まれている。生物標本に含まれる分子情報を用いた研究分野はミュゼオミクス (Museomics) と呼ばれ、現在世界中で注目を浴びている。博物館標本には「その時間その場所にあった当時の」分子情報を含んでいることから、現在では取得の難しい過去の情報に容易にアプローチすることができる。そのため、生態学に限らず多くの学問分野において、博物館標本の活用は大きなブレイクスルーとなりうる。2010年代以降のハイスループットシーケンサーの普及に伴い、研究例は海外を中心に増え続けており、また2020年代からはゲノム規模で博物館標本を利用する事例も見られるようになってきた (Museum genomicsと呼ばれている)。
こうしたミュゼオミクスは、実際に研究現場でどのように活用できるのだろうか。また当然ながら博物館標本中の遺伝情報は劣化が進んでいる。どのようにすれば博物館標本の遺伝情報を活用できるのだろうか。本講演では、博物館標本の遺伝情報について概説し、最近の国内外のミュゼオミクスの研究事例を紹介するとともに、今後のミュゼオミクスの展望についても議論したい。