| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
自由集会 W23-3 (Workshop)
小笠原諸島ではグリーンアノールが移入定着し、固有種を多く含む在来昆虫相は壊滅的な捕食被害を受けている。そこで、本種の行動を抑制する音響刺激を探索し、特定の場所への侵入を防ぐ忌避音の開発を本研究の目的とした。単純な機械音と複雑に編集された合成音のいずれかを再生し、刺激音に対するグリーンアノールの反応を室内実験で観察した。どちらの音を再生した条件でも約80 %の場合で対象個体がスピーカー近傍へ足を踏み入れることを防げた。また、四日間の連続曝露においても撃退効果は弱まらず、数日という時間スケールでは忌避音への慣れは認められなかった。しかし、特定の個体が何度もスピーカー周辺でも居座る傾向がみられ、そのような個体を別の行動実験で評価したところ、極端に大胆であることを見出した。本研究で開発した忌避音はグリーンアノールの行動抑制に概ね有効であるが、大胆な個体への効果は弱い可能性があり、このような特殊個体も対処する必要性が浮き彫りとなった。また、音響刺激への曝露がグリーンアノール及び非対象動物へ与えるストレスの把握に関しても議論の余地が残されている。