| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


自由集会 W25-1  (Workshop)

西日本のイネ科草本の優占する草原を主たる生育環境とする草原生植物リストの試案【O】
A tentative list of grassland plants species in Western Japan【O】

*橋本佳延(兵庫県博), 澤田佳宏(兵庫県立大, 淡路景観園芸学校), 松村俊和(甲南女子大学)
*Yoshinobu HASHIMOTO(HITOHAKU), Yoshihiro SAWADA(Univ. of Hyogo, ALPHA), Toshikazu MATSUMURA(Konan women's Univ.)

橋本ほか(2024)(https://x.gd/FasDZ)では島嶼部を除く西日本に分布する植物3826 種を一定の基準に従って判定し,579 種を草原生植物として抽出した.判定時の検討項目は(1)草原と草原生植物の定義,(2)判定プロトコル,(3)対象種のハビタット情報に関する文献,の3つであり,これらによっては抽出される種が大きく変わりうる.
(1)は,草原を「乾性陸地のイネ科草本優占植生」のうち半自然草原と一部の自然草原としたが,自然草原に限る見解や広葉草本優占植生を含める見解もあり得る.また草原生植物は,半自然草原が遷移の途中相であることを鑑み,「草原にのみに出現する種」と「草原を主な生育地とするが他の環境でも生育する種」としたが,前者のみとする見解もあり得る.
(2)は,草原以外で主に生育する種を除外する工程と,草原を生育環境とする知見の多寡により草原生であると判定する工程の二部構成とした.前者では生活形や、他の生育環境を主な生育地とする情報(照葉樹林要素,高山植物,海岸植物などのリストへの掲載)に基づき除外し,後者では各種文献や草原研究者の調査経験に基づく草原植生での生育情報の多寡をもとに判定した.
(3)は,広範な種のハビタット情報の記載がある複数の図鑑に加え,図鑑での記載が限られる希少種のハビタット情報をRL/RDBで補った.また,対象種の草原における出現頻度を把握するために,草原植生に関する文献の植生調査資料・組成表・常在度表を用いた.
上記においても,「草原生植物と湿生植物」や「草原生植物と林縁生植物」の区別の必要性の是非,「草原を主な生育地とする種がリストから漏れる判定」と「草原を主な生育地としない種がリストに含まれる判定」が生じる可能性等といった課題が残る.また,地理的範囲を東日本に拡張すれば,本稿で亜高山・高山植物とした種が冷温帯域では草原生植物と判定される可能性がある.


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