| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


自由集会 W27-2  (Workshop)

世界自然遺産・知床周辺海域の海氷変動予測と海洋生態系への影響【O】
Prediction of sea ice and climate change impacts on marine ecosystems in the southern Sea of Okhotsk around Shiretoko, a World Natural Heritage【O】

*三寺史夫(北海道大学)
*Humio MITSUDERA(Hokkaido University)

北海道オホーツク海沿岸は季節海氷が到達する北半球の最南端であり、地球温暖化に敏感な海域と考えられている。本研究では、北海道東方海域での海氷変動に着目し、2050年および2090年に関する海氷変動を予測・評価した。予測実験は、オホーツク海全体をカバーする解像度1/10°の海氷・海洋モデルに北海道周辺の海域をカバーする解像度1/50°のモデルをネスティングし、国際的な第6期気候変動モデル相互比較計画(CMIP6)により導出された将来気候値と現在気候値の差分を大気境界条件として利用することにより行った。これにより、北海道沿岸というローカルな海域での海氷変動予測が可能となった。その結果、低位温暖化シナリオ(21世紀後半にCO2排出量実質ゼロ)では、将来、海氷は現在の1/3程度に減少しつつも、知床に流氷がほぼ毎年到達可能なことが示された。一方で、高位温暖化シナリオ(CO2排出制限無し)では、21世紀末に知床から海氷が消失することが予測された。
また、海氷減少に伴う物質循環・低次生態系および魚類や海棲哺乳類への影響を評価した。例えば、海氷を出産などの上陸場として利用するアザラシ等海棲哺乳類の来遊・滞在など在データはほとんどなかったが、これら対する音響モニタリング観測を、海氷期を含む長期間に亘って実施することができた。その結果、好氷性アザラシの分布と海氷勢力との関連を示し、海氷後退に伴う好氷性アザラシの減少を予測した。


日本生態学会