| 要旨トップ | 受賞講演 一覧 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


第30回 日本生態学会宮地賞/The 30th Miyadi Award

生態学と生態毒性学と私
Ecology, Ecotoxicology, and Me

岩崎 雄一(産業技術総合研究所)
Yuichi Iwasaki(National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST))

化学物質の生態リスク評価や生態毒性学では、単一の生物種を対象とした室内毒性試験から得られる毒性情報がその中心にある。しかし、自然環境下では多様な生物種が存在し、化学物質以外の環境要因も同時にそれらの生物種に影響している。では、室内試験から得られた毒性値は、実環境の生物群集にとってどのような意味を持つのでしょうか。また、そのような毒性値から導出される環境基準が不確実性を持つことを前提に、どのような管理が適切なのでしょうか。
私は、河川生態系を主な調査対象として、「評価や管理に必要な科学的な知見とは何か」を問いながら、金属類を含む化学物質が生物群集に及ぼす影響を、野外生物調査と統計・数理モデリングの両面から研究してきた。本講演では、まず、休廃止鉱山周辺の河川を中心とした野外調査を通じて、亜鉛等の金属類が底生動物群集に及ぼす影響を評価し、野外データに基づく“安全”濃度を推定してきた一連の研究成果について紹介する。さらに、鉱山周辺河川から一般河川へと対象を広げ、水質悪化が懸念される河川地点がどのような特徴を持つかを評価できる基盤として、全国の環境基準点の物理化学的特徴や底生動物指標を整備した取り組みについても紹介する。その上で、今後の課題について議論したい。最後に、生態学会への参加を通じて学んだ方法論をもとに研究を展開してきた経験に触れるとともに、論文を“丁寧に”書くこと、そして魂を込めた論文を自分の好きな学会の雑誌に投稿することの重要性についても伝えたい。


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