| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) G03-12 (Oral presentation)
日本植物園協会に加盟する植物園では、現在、「植物多様性保全2030年目標」をかかげ、環境省との基本協定のもと、日本産絶滅危惧維管束植物種の生息域外保全の取り組みを活発化させている。京都府立植物園は、1924年に開園した日本最古の公立植物園であるが、2000年代半ば以降、協会加盟園として絶滅危惧種の収集・栽培にも取り組んでおり、2012年に絶滅危惧種園、2015年に絶滅危惧植物保全温室を新設し、現在、約300種の絶滅危惧種(環境省RL)を栽培・保全している。植物園施設による生物多様性保全の取り組みは世界的にも注目されつつあるが、現在のところ詳細はあまり知られていない。
そこで、本報告では、総面積24haの園内のほぼ中央に位置する「植物生態園」に着目し、約10年ごとに同園が発行してきた『植物目録』(1963~2004年)などの資料を中心に、植物生態園に植栽した植物の導入・栽培・移植の約40年間の変遷を整理した。植物生態園は、「日本の代表的な植生の縮小園」として1970年に公開された1.5haの展示エリアである。建設当時の目的は、「公害のデパート」といわれた当時の日本列島を鑑み、来園者が「日本の自然の美しさ」に接することができる「みごとな落ちついた森」を数十年の年月をかけて創り出すことであったが、結果的に、①1970年の時点で生態園に植栽した約1000種の植物のうち約170種が、のちに絶滅危惧種(環境省または京都府)となる植物であったこと、また、②園内の他所(バックヤード・栽培管理地を含む)への移植等による増減を経ながら、生態園に導入された履歴のある植物約1400種のうち約300種が絶滅危惧種であることなどがわかった。考察を深めるにはさらなる分析が必要ではあるが、植物生態園を都市の中の森として育み、植物を維持・管理するための約40年間の園内活動が、近年の絶滅危惧種の保全と、専門性の高い栽培技術と知識の継承に大きな役割を果たしたといえる。