| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-04 (Oral presentation)
餌生物の捕食リスクに対する応答は個体の生理的条件や生息環境等、様々な要因により変化し、同じ分類群でも種間で異なりうる。ヤドカリは捕食リスクを感じるといったん殻に隠れるが、再び出てくるまでの時間(驚動反応時間)は、捕食者への警戒性の高さによって変化する。例えば、ホンヤドカリ科のヨーロッパホンヤドカリPagurus bernhardusでは、捕食リスクがない場合と比べある場合に驚動反応時間は長くなることが報告されている。今回、同じホンヤドカリ科のホンヤドカリP. filholiおよび系統的に異なるヤドカリ科のテナガツノヤドカリDiogenes nitidimanusを用いて驚動反応時間を測定し、比較してみた。
ホンヤドカリは和歌山市の岩礁転石潮間帯で、テナガツノヤドカリは和歌山市の干潟で2023年、2024年に採集し、それぞれ大学に持ち帰り室内で実験を行った。ヤドカリの入った貝殻を手で持ち上げ、殻口を上に向け5秒間停止し、ヤドカリが完全に殻に隠れた事を確認した後に海水を入れた容器の床に置き、置いた瞬間からヤドカリが姿を現して歩脚が地面に付くまでの時間を測定した。それぞれのヤドカリの種について、人工海水または捕食者水(イシガニの飼育水)に浸した場合の驚動反応時間を1個体につき4回、30分間隔で測定した。
解析の結果、驚動反応時間の平均値は、ホンヤドカリでは捕食リスク有りの場合に人工海水の場合よりも有意に短く、テナガツノヤドカリでは捕食リスク有りの場合に人工海水の場合よりも有意に長いという、対照的な結果となった。先行研究のヨーロッパホンヤドカリでは捕食リスク有りの場合に長いため、系統よりも生息環境の影響を受けていると思われる。類似した実験が行われているカナダのP. granosimanusやユビナガホンヤドカリP. minutusの結果も参考に、ヤドカリの利用する貝殻の種類とその頑丈さ等に着目し、ヤドカリの種によって対照的な驚動反応を示す理由について考察する。