| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-08 (Oral presentation)
アカウミガメは、数百~数千キロメートル規模を移動する回遊を行う。このような長距離移動を正確に行うためには、自身の位置を把握しながら進路を調整する仕組みが必要であり、その手がかりの一つとして地球が持つ磁場(地磁気)の利用が考えられている。先行研究では主に幼体を対象に検証されてきた。しかし、アカウミガメが長距離を移動して正確に目的地に到達する能力を発揮するのは亜成体以降の段階であり、その段階で地磁気を利用しているか検証する必要がある。本研究では、亜成体のアカウミガメに対して頭部周辺の磁場を攪乱し、その際の行動変化から、磁場の変化を感じ取る能力(磁場感覚)の有無を評価した。
岩手県大槌町付近の定置網で混獲されたアカウミガメを用いて実験を行った。亜成体のアカウミガメ7個体を一時的に円形水槽で飼育し、磁場発生のON/OFFと極性を切り替えられる磁場攪乱装置を頭部に装着した。実験期間中は自動で30分ごとに磁場の極性を反転させながら、合計180分の磁場変化刺激を与えた。行動の変化を調べるために水槽上部からビデオ撮影を行い、1分ごとの頭の向きを記録した。1分前との頭の向きの角度差の合計値(累計回転角度)を行動量の指標とし、磁場の攪乱を行っていない区間と比較した。
結果として7個体中6個体で、磁場を攪乱している際に累計回転角度が減少した。この変化は、実験時間帯や水温などの条件では説明されず、磁場攪乱の有無によってのみ説明された。本研究により、亜成体のアカウミガメにおいても磁場感覚が存在すること、磁場情報が行動変化として現れることが明らかとなった。これは、野生下においても地磁気情報が移動行動に利用されている可能性を示唆する。