| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-10  (Oral presentation)

協同繁殖魚の親がサボるヘルパーを罰するかどうかは群れサイズや個体間の近さで決まる
Dominant breeders punish idle helpers depending on group size and spatial proximity in a cooperatively breeding cichlid fish

*日高諒, 井上諒一, 細田千咲, 北向祐人, Will SOWERSBY, 安房田智司(大阪公大・院・理)
*Ryo HIDAKA, Ryoichi INOUE, Chisaki HOSODA, Yuto KITAMUKAI, Will SOWERSBY, Satoshi AWATA(Osaka Metropolitan Univ.)

ヒトを含む協力社会を築く動物では、罰が協力関係を支える重要な手段であると考えられている。ヒトでは、罰の発生条件や効果について理論研究や実証研究が多くなされている。一方、ヒト以外の動物では、罰の存在そのものの実証例ですら一部の脊椎動物に限定され、罰の発生や効果に影響する要因を包括的に評価した研究はない。動物の協力行動の維持機構を理解するには、罰がどのような状況で発生し、それが効果的に機能するのかを明らかにすることが重要である。そこで本研究では、ヘルパーと呼ばれる個体が繁殖個体の子育てを手伝う協同繁殖魚Neolamprologus savoryi(サボリ)を対象に、ヘルパーの手伝いを制限する野外操作実験を行った。また、実験グループの社会構造を特定し、罰に影響を与えると考えられる5つの要因(他ヘルパーの貢献度、群れサイズ、繁殖個体とヘルパーの物理的近さ、体サイズ差、血縁度)が、繁殖個体によるヘルパーへの罰に与える影響を評価した。その結果、手伝いを妨げられたヘルパーは、距離の近い繁殖個体からより長く攻撃を受け、ヘルパーは繁殖個体から受けた攻撃量に応じて、なわばり防衛(手伝い行動)時間を増加させていた。また、繁殖個体のヘルパーへの攻撃時間は、他ヘルパーの貢献度や繁殖個体との体サイズ差、血縁度に影響を受けず、群れサイズが大きくなるにつれて減少することが明らかになった。これらの結果は、野外において、サボリの繁殖個体が罰を用いてヘルパーの協力行動を促進すること、特に繁殖個体がヘルパーを監視しやすい、かつ手伝いが必要な状況である小さなグループにおいて、繁殖個体は、手伝いという見返りが期待できる近い場所にいるヘルパーに罰を与えることを示唆している。本研究は、ヒト以外の動物における罰の発生に影響する要因を網羅的に評価した初めての研究であり、動物の協力社会の維持機構の理解に大きく貢献する。


日本生態学会