| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-11 (Oral presentation)
一部の動物は社会集団を形成して生活し、時には自身の繁殖を放棄してまで集団にとどま
る個体が出現するため、行動生態学の重要な研究課題とされている。これを説明する枠組み
として、血縁選択が主要な要因と考えられてきた。しかし、繁殖資源の制限といった生態学
的制約や他個体からの圧力といった社会的制約により、非血縁のない個体同士でも社会集団
や協力行動が進化することが示唆されている。その一方で、これらの制約要因の変動により
集団の社会構造や行動がどのように応答するかは明らかではない。本研究では、非血縁個体
による集団で生活するクマノミを対象とし、生息地のイソギンチャクの密度が異なる個体群
間で社会構造と行動を比較した。発表者のこれまでの調査から、イソギンチャクが高密度な
室手個体群環境では、体サイズに基づく順位制が崩れることで雌による大きな雄の選択が発
生し、雌が小型雄に社会的圧力を加えることで非繁殖雄が出現することが明らかになってい
る。この結果を、イソギンチャクの密度が低いパプアニューギニアの個体群と直接比較した
。その結果、パプアニューギニア個体群では、ほとんどの場合で単一のイソギンチャク上に
強い順位制を伴う集団を形成しており、室手個体群室手では多数のイソギンチャクをの利用
するとともにによって明らかに順位制が弱まっている崩れていることが確かめられた。また
、行動を比較したところ、パプアニューギニアの方が攻撃や劣位行動といった個体間相互作
用が密接に行われておりの頻度が高く、卵保護行動などの協力的な行動にも両個体群で違い
があることがわかった。以上の結果から、生息地のイソギンチャクの密度に応じ、クマノミ
の順位制の強さや社会行動のパターンが大幅に変化することが示された。イソギンチャクの
密度はクマノミの移動性(生態的制約)と直結しており、集団内に滞在する必要性(社会的
制約)が変化することで、社会構造と行動のダイナミクスが創出されていると考えられる。