| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-15  (Oral presentation)

ナカスジハリアリの繁殖行動と近縁種との分布パターン
Reproductive behavior of Brachyponera nakasujii and its distribution patterns with closely related species

*井上哉太, 千代田和真, 河合淳之介, 平松大典, 山内亮人, 小山哲史, 佐藤俊幸(東京農工大学)
*Kanata Sakaya INOUE, Kazuma CHIYODA, Junnosuke KAWAI, Daisuke HIRAMATSU, Ryoto YAMAUCHI, Satoshi KOYAMA, Toshiyuki SATOH(Tokyo univ. agr. tech.)

  アリ類は多様な交尾戦略を取ることが知られており,飛翔を伴う結婚飛行による交配や生まれた巣内で交配を行う巣内交尾など,交尾が行われる場所や繁殖後の移動分散に様々なパターンを持つ.これらの交尾戦略は,往々にして交尾相手との血縁関係や集団遺伝構造と関連していることから,アリ類の基礎生態として重要な情報である.
  ナカスジハリアリ(Brachyponera nakasujii; 以下,ナカスジ)は,2010年に形態の酷似したオオハリアリ(Brachyponera chinensis; 以下,オオ)から別種として記載されたアリ種である.ナカスジはオオと比較してより湿潤な環境に生息し (Yashiro et al. 2010),繁殖期である7月には複数の女王を含む巣の割合が増加するが8,9月にはその割合が減少する傾向があること,巣内に産卵の経験がある未交尾の女王が存在する例があることが野外のコロニー採集の事例から報告されている (Gotoh and Ito 2008).しかし,本種の巣内の女王数の変動,未交尾女王の存在の要因となる行動や本種とオオの詳細な分布の関係については不明である.
  本発表では,ナカスジにおけるオオとの詳細な分布の関係と,繁殖行動に関する事例を報告する.野外採集の結果,ナカスジとオオが局所的に入り混じった分布をとる地点が発見された.行動観察の結果,ナカスジの生殖虫は羽化後1週間で巣内交尾を行い,交尾後女王は正常に脱翅,産卵を行うことが観察された.また,雄のいない巣では,有翅女王は羽化後2週間で交尾せずに脱翅し,その後産卵を行うことが観察された.さらに,生殖虫の羽化後,一部の女王がワーカーにより巣から追い出され,殺される行動が観察された.これらの観察事例は,Gotoh and Ito (2008) における繁殖期前後のコロニー構造のデータと合致するものである.


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