| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) H03-01  (Oral presentation)

ブナ帯に位置する小規模地沼における植物相に関する研究
A study on the flora of small-scale ponds located in the beech forest zone

*山岸洋貴(弘前大学)
*Hiroki YAMAGISHI(Hirosaki Univ.)

ブナ帯では主に地滑りによって形成される凹地に小規模な湖沼(池沼)がしばしば存在する。これらの池沼の多くは成立時期が比較的新しく、形成以前から周囲に森林が存在していたものと考えられる。したがって、形成時から継続して周囲の水域から孤立し、また流入する水路がほとんどなくまとまって供給される水量は限定的である場合が多い。そのため落ち葉などが蓄積しすく、止水環境は比較的早く遷移が生じる動的な環境であると推測される。しかし、山地における止水域の分布は限定的であり、小規模であってもこれらは水辺を利用する生物にとって必要不可欠な環境である。この特殊な背景を持つ池沼の形成、遷移過程や環境特性、山地の生態系における生態学的役割についてはあまり解明が進んでいない。本研究は、ブナ帯に多く存在する地滑り由来の池沼が地域の生物多様性創出や維持にどれほど寄与するのかを理解することを目的とし、池沼の環境特性および生物相を明らかにするものである。研究対象地は、ブナ帯に多くの池沼が存在する白神山地を中心とする青森県と新潟県中越地方とし、これまで青森県で8地点、新潟県では6地点、それぞれの地点に存在する池沼を踏査し、各池沼の止水内および周囲の植物相、水深などの環境条件について明らかにした。多くの地沼で止水域に主に生育する水生植物が観察されたが、その出現種および種構成は地域内の近傍の地沼間でも異なる傾向が示された。一方で多くの地点で共通してタマミクリやナガエミクリなどのミクリ属植物が観察され、これらは水鳥によって種子が運ばれたことが推測される。また地図標記や過去の航空写真から止水域が存在していたことが確認されていた地点でも、いくつかは調査時には消失しており、短い期間での遷移が生じる可能性が示された。


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