| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) H03-03 (Oral presentation)
着生植物は森林の生物多様性を支える重要な構成要素であるが、樹幹上に生じる光や水分などの垂直環境勾配や宿主木の違いに対し、種内でどのように機能形質(成長、生存、繁殖への影響を介して間接的に適応度に影響を与える形質)を変化させて適応しているのかはほとんど解明されていない。本研究では、着生シダ植物の一種、ヤエヤマオオタニワタリ(以下オオタニワタリ)の葉の機能形質が種内で垂直位置や宿主木形質に沿って変化し、個体の成長・生存・繁殖の予測因子となり得るか検証した。沖縄県西表島において、オオタニワタリ653個体の、形質シンドローム(形質の組み合わせ)に重要と考えられる葉形質(比葉面積(葉面積/乾燥重量), 葉乾物含有量(乾燥重量/湿重量), 葉厚, クロロフィル濃度, 葉面積, 葉寿命)と、各個体のパフォーマンス(成長量, 生存率, 成熟度)を記録した。オオタニワタリの葉形質は垂直位置に沿って変化し、低着生高から高着生高にかけて、陰葉的な形質から陽葉的な形質へと変化したが、宿主木との関連は見られなかった。また、オオタニワタリの個別の葉形質はそれらのパフォーマンスの予測因子にはならなかったが、主成分分析で要約された形質値はパフォーマンスと関連し、高着生高では繁殖への投資、低着生高では日陰環境における生存への投資がみられ、葉の寿命はどの個体でも約2年であると推測された。また、高着生高は直接的・間接的に個体のパフォーマンスに正の効果を与えていた。以上より、オオタニワタリは樹幹上の光環境の勾配に葉形質を陰葉的~陽葉的に非常に柔軟に変化させて適応していることが示され、樹幹上の高い位置に着生することが適応的であることが示唆された。