| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) H03-06 (Oral presentation)
海浜は貧栄養な砂地、高い地温、塩水の曝露など、植物にとって厳しい環境である。この環境に生育する海浜植物の集団は、都市開発や護岸工事、浸食などの影響を受けやすく、現在では海岸線に点在し、孤立して存在していることが多い。こうした状況の中で、多くの海浜植物では、種子が海流によって長距離輸送される海流分散が、集団間の遺伝子流動に重要であり、集団の形成・維持に大きな役割を果たされていると考えられている。しかし、種子の海水浮遊能力や成熟期間には種間で違いがあり、これらの差異が分散様式や集団構造に与える影響を定量的に検証した研究は少ない。また、日本列島沿岸近海には複数の海流が存在し、その流動は季節や年によって変動することが知られている。本研究は、種子特性の違いや海流の時間的変動が、海流分散を介して推定される集団構造にどのような影響を与えるのかを、粒子追跡型シミュレーションを用いて検証することを目的とする。
本研究では、粒子追跡型シミュレーションモデルであるOpenDriftを用い、浮遊期間、種子の放出時期、対象年を組み合わせた複数条件を設定し、日本沿岸約60地点(沖縄~北海道)から粒子(=仮想種子)を放出するシミュレーションを実施した。さらに、日本列島外との広域的な接続可能性を評価するため、東アジア沿岸との接続性を検証する目的で韓国・中国・台湾の地点も補足的に設定した。シミュレーションにより算出された地点間の接続距離に基づいてクラスタリング解析を行い、各条件間での分散パターンの差異を比較する。本発表では、種子の特性の違いが推定される集団構造にどのような差をもたらすかを示し、海流分散パターンが海浜植物の遺伝構造の形成に与える影響について報告する。