| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) I01-10 (Oral presentation)
近年我が国では、減少の著しい水生植物を保全するために土壌シードバンクを活用する例が多くみられる。土壌シードバンクは遺伝的地域性を保持していると考えられるため、植物の保全・再生に極めて有用である。ところが、土壌シードバンク中の埋土種子の生存率は時間と共に低下するため、利活用の可能性を残すには土壌シードバンクの減少を防ぐ何らかの介入が必要である。そこで、生育環境の改善が十分でなくとも行える小規模かつ一時的な植生再生によって種子を生産し、土壌シードバンクの密度を回復させる方法の効果を検証した。
1960年代に大規模な水生植物群落が消失した千葉県の印旛沼において、2008年以降実験的に沈水植物を再生させた地点と、そうでない隣接した地点との間で土壌シードバンクの違いを調査した。その結果、沈水植物の土壌シードバンクの種組成や密度に顕著な差異が認められ、シャジクモ属(Chara sp.)とフラスコモ属(Nitella sp.)の数種は再生植生中に出現した期間が短いにも関わらず、埋土種子が高密度に存在することなどが判明した。本調査によって、一部の沈水植物に関しては地上植生の再生によって土壌シードバンクが回復可能であることが確認された。
また、土壌シードバンクの維持に有効な植生再生の頻度を定量化するために、推移行列モデルの研究に着手した。地上植生が再生される期間と地上植生が消失している期間で異なる個体数遷移行列を適用し、保全対象の植物種固有の生存率や再生産率のパラメータを用いて埋土種子数の増加率を計算することにより、土壌シードバンクが持続可能となるような植生再生頻度を推定するフレームワークを構築した。