| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) I01-14 (Oral presentation)
ニホンヤマネ(Glirulus japonicus、以下ヤマネ)は冬眠する動物である。冬眠中に時々体温を上昇させ、それが中途覚醒と呼ばれるが採餌・移動などの活動は行わないとされている。しかし、山口県に生息するヤマネは冬眠期間中に採餌・移動を行っていると推察されてきた。この特有の生態について調査するため、本研究ではヤマネの冬眠期間中の体温変動と行動をモニタリングした。
本研究は山口県のスギ人工林内で捕獲された4個体のヤマネを供試し、捕獲地近くの民家の庭を借りて2024年12月2日~2025年3月26日まで行った。ヤマネの冬眠用に作製した小型巣箱の底部に温度データロガーを設置し巣箱の温度変化を測定することで、覚醒と冬眠のタイミングを推定した。また、その推定をより確実なものとするために自動撮影カメラによる撮影も行った。給餌は週1~2回行い、水は自由飲水とした。
4個体中3個体について冬季の体温変動データを取得することに成功した。3個体共に冬眠中に覚醒して巣箱外で採餌をし、その後巣箱に戻り再び冬眠するという一連の行動を繰り返した。冬眠日数は気温が低くなる1~2月に増加する傾向が見られた。3個体共に1~2月は覚醒し採餌をしたが、体重が減少した。4個体中1個体は2025年2月下旬に人工林内に仕掛けた巣箱において前月にはヤマネが不在だった巣箱内で捕獲された。これらのことから、山口県に生息するヤマネは冬眠期間中に覚醒して採餌・移動などの活動を行っていることが示唆された。また、晩秋から冬眠期間にかけてヤマネの餌資源としてヒサカキ(Eurya japonica)の果実が重要であるが、ヒサカキの結実量によって餌資源の乏しい冬季を乗り切ることができる年とそうでない年が発生することが示唆された。
本研究で得られたヤマネの冬季の体温変動データは3個体分と十分とは言えず、今後も同様の実験を行い、例数を増やしていくことで冬季の生態解明に繋がると考えられる。