| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-02  (Oral presentation)

半自然草原の制度的位置づけの分析とOECMの適用可能性
Analysis of the Institutional Positioning of Semi-Natural Grasslands and the Applicability of OECM

*野田顕, 大澤剛士(東京都立大学)
*Akira NODA, Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan Univ)

日本の草原の多くは人為的管理に依存し、社会的制度における位置づけは不明瞭である。この制度上の曖昧さは、草原が保全の枠組みに組み込まれにくい状況を生み、喪失の一因となっている可能性がある。本研究では、土地利用制度および自然保護制度に注目し、各制度における草原の位置づけを整理し、今後の草原保全のあり方について議論する。

まず、全国の半自然草原283地点の分布を国土利用計画に基づく五地域区分に重ね、半自然草原の地域区分別の分布を明らかにした。次に、土地利用関連制度の用語から半自然草原に該当する区分を抽出し、半自然草原の制度的な実態を把握した。さらに、自然保護・保全制度における半自然草原の存在と管理方針を整理した。

その結果、半自然草原は自然保全地域を除く4区分に分布し、農業地域で最も多く確認された。検討した半自然草原の約55%は複数の地域区分にまたがって存在していた。用語の整理では、半自然草原に該当しうる区分は各制度間および制度内で散在しており、その定義や範囲に一貫性は認められなかった。自然保護・保全制度では、国立公園で人為的管理の必要性を明記したものは20%にとどまり、自然環境保全地域や重要文化的景観においても半自然草原の積極的な維持は十分に位置づけられていなかった。

土地利用制度では半自然草原が複数の区分に分散し定義も一貫せず、自然保護・保全制度でも人為的管理を前提とする半自然草原を積極的に保全する仕組みは限られていた。これらは従来の「原生的自然」を重視する制度理念と半自然草原の性質が整合しにくいことを示す。この状況を踏まえると、従来の枠組みよりも、草刈りなどの管理行為を含めて評価可能なOECMの枠組みが現実的である。特に「自然共生サイト」としての認定は、農地に点在する半自然草原の保全にも適用し得る新しい制度的選択肢となり、日本の保全体制を補完する有効な手段となる可能性が高い。


日本生態学会