| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) I02-05 (Oral presentation)
小笠原諸島聟島列島に位置する媒島は、1.37㎢の小島であり、戦前に放置されたノヤギの増加により、植生は激しく影響を受け、土壌流出が起こるという生態系の崩壊が起きていた。東京都は1997年から3年をかけてノヤギの根絶を達成し、同諸島における本格的な外来種対策の先駆的なものとなった。クマネズミも生態系に大きな影響を与えていたが、殺鼠剤の散布により2018年に根絶が達成されている。
根絶から四半世紀が経過し、植生は緩やかであるものの回復し、小笠原固有種の草本類や在来樹種の森林も拡大傾向にある。また、クロアシアホウドリ等海鳥の個体数が増加している等、保全上の朗報がある。しかし、外来種のギンネム、ヤダケ、ホテイチク等の植生が優占する範囲の拡大が課題となっている。一方で、固有の陸産貝類や昆虫の中にはこうした外来竹類の群落に生息する種も存在し、駆除のための皆伐のような大きな変化は危険かもしれない。
こうした状況のなか、植生の回復状況の評価や、今後の外来植物駆除の参考とするために、大型土壌動物のモニタリングを開始した。全島でワラジムシ類やヨコエビ類といった陸生甲殻類が卓越していることが特筆される。同島にはムシクイリクヒモムシやオオヒキガエル等の土壌動物を捕食する侵略的外来種は侵入していない。陸生甲殻類が優占することは、かつては父島や母島を含む小笠原諸島の特徴であったが、外来ヒモムシの侵入した地域ではほぼ見られなくなっている。その他、島固有の可能性が高い未記載のゴミムシ、ハネカクシ、ゾウムシが発見されており、特に保全的価値が高い。こうした固有種は主に林齢の高い在来林で確認されるが、ヤダケ林の一部にも侵入しており、外来竹類の伐採は全域で皆伐するのではなく、在来植生の回復を促しつつ、状況に応じた細やかなで適切な防除が必要であると考えられる。
(※本調査研究は東京都の「聟島列島植生回復調査」により実施されている。)