| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-06  (Oral presentation)

北海道東部の防風林景観において絶滅危惧種ゴマシジミはメタ個体群を形成している
The endangered butterfly Maculinea teleius Ogumae forms a metapopulation in the shelterbelt landscape in eastern Hokkaido.

*榊原正宗(兵庫県立大学), 速水将人(道総研・林業試験場), 大脇淳(桜美林大学), 中濱直之(兵庫県立大学, ひとはく)
*Masamune SAKAKIBARA(University of Hyogo), Masato HAYAMIZU(HRO Forestry Research Inst.), Atsushi OHWAKI(J. F. Oberlin University), Naoyuki NAKAHAMA(University of Hyogo, Hitohaku)

メタ個体群とは、局所的な絶滅と再定着を繰り返しながら存続する個体群構造であり、メタ個体群が形成されることで地域個体群の長期的な絶滅リスクの低減につながるとされている。
北海道東部には、大きな格子で1辺約2 km、林帯幅約200mの巨大な格子状防風林が拡がっている。効率的で安定した農業生産を目的に造成された防風林であるが、防風林を取り巻く環境、すなわち防風林景観には希少種をはじめとする様々な生物が生息していることも知られている。北海道東部の防風林景観には、草原性チョウであるゴマシジミ北海道亜種も生息しており、環境省レッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。本種は、定期的な防風林管理や周囲の道路脇の草刈りによって創出・維持されている林縁や伐採地などの小規模な草原パッチに分布している。
分散能力の低いゴマシジミでは、北海道東部の防風林帯によって個体群間が分断され、孤立個体群が生じている可能性があると仮説を立てた。そこで本研究では、防風林が本種の分散や遺伝的多様性に与える影響を明らかにするため、防風林景観に生息する173個体を対象にMIG-seq法による集団遺伝解析および景観解析を実施した。
その結果、十勝集団と根釧集団の集団間では遺伝的分化が認められた一方、各集団内では50kmおよび70km規模でのメタ個体群を形成している可能性が示唆された。また、林帯数と遺伝子流動および遺伝的分化の相関関係を調べたところ、防風林帯は本種の障壁にはなっていないことが示唆された。さらに、生息地周囲の森林面積および森林縁長と遺伝的多様性の相関関係を調べたところ、周囲の森林要因は本種の遺伝的多様性に負の影響は与えていなかったことが示された。これらの結果から、現在の防風林管理によって生み出される林縁部や更新地の草原環境がゴマシジミ北海道亜種の遺伝的多様性の維持に寄与している可能性が示唆された。


日本生態学会