| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-08  (Oral presentation)

水田の湛水開始時期がサギ類の採餌環境を左右する:衛星画像による季節変化の解析
Satellite-based estimation of seasonal shifts in heron foraging habitat using paddy flooding onset

*安野翔, 大和広明(埼玉県環科国セ)
*Natsuru YASUNO, Hiroaki YAMATO(CESS)

 水田には多様な湿地性生物が生息し、サギ類にとっては餌動物が高密度で存在することから、質の高い採餌場として機能する。しかしイネの生長に伴い水田内での視認性が低下し、採餌が困難となる。埼玉県北部・東部の水田では田植え時期に大きな地域差があり、早い地域では4月中旬、最も遅い米麦二毛作地帯では6月下旬以降に田植えが行われる。このため、サギ類は季節に応じて採餌に適した水田を使い分けている可能性がある。本研究では、合成開口レーダ搭載の衛星画像により、圃場単位で湛水開始時期を推定し、水田生態系における高次捕食者であるサギ類の採餌適地とその季節的変化の解明を試みた。
 サギ類の分布調査は5~8月に自動車ルートセンサスによって実施し、観察ごとに種名、位置、行動を記録した。湛水開始時期の推定には合成開口レーダー衛星Sentinel-1(回帰12日、空間解像度10 m)を用い、湛水直後に後方散乱係数が低下する特性を指標とした。閾値と精度評価には、光学衛星Sentinel-2 の同日画像を教師データとし、2,344枚の水田に対してPタイル法を適用したところ、VH偏波で正答率80.2%が得られた。
 衛星画像解析の結果、調査範囲の東側では4月から湛水が始まり、季節の進行とともに西側へと湛水が広がる傾向が認められた。サギ類の分布もこのパターンに対応し、5月には湛水の早い東側に集中し、夏に向けて西側へと移動した。さらにMaxEntにより月別に採餌適地を推定したところ、同様に東から西への季節的シフトが示され、サギ類が湛水開始時期の地域差に応じて採餌水田を動的に使い分けていることが示唆された。


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