| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) I03-08 (Oral presentation)
種内で複数の繁殖型が遺伝的に固定され共存する現象は代替繁殖戦略と呼ばれる。例えばエリマキシギのオスでは,縄張りを構えるIndependent型,その周囲でディスプレイを行うSatellite型,メス擬態でスニーキングするFaeder型の3型が知られる。これまで実証研究では繁殖行動の観察から行動や形態の多型が報告され,エリマキシギでは多型の繁殖成功度が推定され、種内多型の維持条件が議論されてきた。理論研究では縄張りをめぐる進化ゲーム理論にスニーキングを組み込んだ数理モデルが提案されてきた。しかし,代替繁殖戦略が出現し、維持される生態学的条件の導出には至っていない。本研究では,複数のオプションを持つオスの繁殖戦略を繁殖期の時間投資という観点から数理モデリングし,Adaptive dynamicsの枠組みで解析した。オスは,繁殖期の時間を縄張りの警戒、もしくはスニーキングに配分するとし、その分配率が遺伝的に固定されている戦略とした。オスの繁殖成功度は時間分配率の関数として定式化され,時間配分の異なる変異体が侵入可能か否かを評価することで,どの変異型も侵入できない野生型の戦略(進化的に安定な戦略)を導出した。その結果,縄張り防衛率,縄張りに訪れるメス数の戦略依存性,性比,戦略間の交尾効率の差が進化的に安定な戦略に影響を与えた。防衛率が高いほど縄張り投資は有利になるが,性比がメスに大きく偏ると、縄張りの外で交尾ができるスニーキングが有利となる。また,縄張りに時間を割くほどメスが集まる場合は縄張りが促進される一方,メスが集まり過ぎて防衛率が低下してしまうような場合にはスニーカーの侵入を許してしまった。これらの結果として,縄張りとスニーキングを併用する両掛け戦略が広い条件下で進化的に安定となることが示された。