| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) J01-01 (Oral presentation)
小笠原諸島は、他の陸地から孤立した立地と、大陸と一度も接続したことのない海洋島としての地学的な特性から、独自の進化を遂げた多くの固有種が存在することで著名である。昆虫では、379種(固有率は記録種の約30%)が記録されており、固有属も18属が記録されている。
小笠原諸島内の小笠原群島には、聟島、父島、母島の3つの列島が存在し、それぞれが40―60㎞程度隔てられ、各列島内も複数の属島が存在するなど、地域内の地理的な隔離効果を検証するにも好適な環境でもある。
演者らは、小笠原群島内で種分化が進んでいることで知られるヒメカタゾウムシ属に着目し、遺伝的な系統解析を進めている。ヒメカタゾウムシ属は、後翅が退化し、上翅が癒着している特徴があり、飛翔能力を失っている。そのため移動能力が強く制限され、地理的な隔離の影響を受けやすいことが予想される。そこで本研究ではミトコンドリアDNA(COI領域)と核遺伝子の解析を行い、本属の地域集団間の系統解析を行った。
今回の遺伝子解析の結果から、多くの知見が得られたが、以下は特に注目される。
1)ヒメカタゾウムシ亜属(Ogasawarazo) では、各列島ごと、また属島ごとの種分化が進行している。これらは、列島内などでの地理的隔離の結果と推察される。
2)父島、母島のような規模の大きい島では、島内での種分化が生じていることが示唆される。
3)兄島、弟島では島内で分布を接する複数の隠ぺい種の存在が示唆された。
4)土壌性のツチヒメカタゾウムシ亜属(Ogasawarazodes)は、これまで外部形態から一つの系統群として扱われていた。しかし、今回の解析結果から各列島に分布する本亜属の種は、それぞれ独自に進化した反復適応放散の結果である可能性がある。これは、今回のもっとも注目される結果で、陸貝などで知られる異所的に生じた環境適応(土壌、樹上)による、平行進化と同様と考えられる