| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-04  (Oral presentation)

ショウジョウバエにおける訪花性の進化をもたらす色選好性と視覚システムの適応
Color preference and visual-system adaptation underlying the evolution of flower-visiting ecology in Drosophila

*桂宗広(名古屋大学), 川村康平(名古屋大学), 藤井航平(名古屋大学), 蟻川謙太郎(総合研究大学院大学), 木下充代(総合研究大学院大学), 石川由希(名古屋大学)
*Munehiro KATSURA(Nagoya Univ.), Kohei KAWAMURA(Nagoya Univ.), Kohei FUJII(Nagoya Univ.), Kentaro ARIKAWA(SOKENDAI), Michiyo KINOSHITA(SOKENDAI), Yuki ISHIKAWA(Nagoya Univ.)

 動物の訪花性はさまざまな系統で進化し、植物の送粉を通じて陸上生態系の多様化に貢献してきた。訪花性はどのような行動や感覚基盤の進化によって形成されるのだろうか?これを解明するため、私たちは訪花性のカザリショウジョウバエ(以下カザリ)を用いて、彼らの花の認識に寄与する行動や神経機構を調べた。
 カザリはノアサガオの花を宿主とする。カザリがどのように花を認識するのか調べるため、造花やさまざまな色の人工花をハエにみせた。その結果、カザリは造花、また花に似た青の人工花を選んで訪花した。これにより、カザリが視覚、特に色の情報で花を認識することがわかった。
 次に、カザリの視覚システムが訪花性に関連する特徴をもつかを明らかにするため、個眼や視細胞の解剖学的な性質を非訪花性のキイロショウジョウバエ(以下キイロ)と比較した。複眼の大きさは同程度だが、個眼面はカザリの方が小さかった。さらに視細胞の光受容構造である感桿分体に関して、カザリでは、物体の動きなどを処理するR1-6視細胞および、紫外光を受容するR7視細胞の感桿分体が細く、一方で青や緑色光を受容するR8視細胞の感桿分体は太かった。個眼面に入った光はレンズで感桿分体に集められ、電気信号に変換される。このためカザリは、各視細胞がより狭い範囲の光を受容することで、分解能を高めている可能性がある。一方でR8視細胞が受容する波長に関しては、感桿分体を拡大することで感度を上昇させていると考えられる。これと一致するように、カザリの網膜では青色光への相対感度がキイロの約1.5倍高かった。このことから、カザリは宿主の花へ高い感度を持つ視覚システムを持つことが示唆された。
 本研究の結果から、カザリが宿主花の色である青への選好性と、青色への感度の高い視覚システムをもつことがわかった。この色選好性の獲得と関連した視覚システムの適応が訪花性の進化に寄与したと考えられる。


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