| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-07  (Oral presentation)

雌雄異株植物オニドコロにおける性決定候補遺伝子の同定
Whole-genome sequencing reveals a possible molecular basis of sex determination in the dioecious wild yam Dioscorea tokoro

*工藤葵(京都大学), 夏目俊(岩手生工研), 杉原優(The Sainsbury Laboratory), 加藤大明(京都大学), 阿部陽(岩手生工研), 及川香梨(岩手生工研), 清水元樹(岩手生工研), 伊藤和江(岩手生工研), 辻村真衣(龍谷大学), 寺地徹(京都産業大学), 堺俊之(京都大学), 太田敦士(京都大学), 寺内良平(京都大学)
*Aoi KUDOH(Kyoto Univ.), Satoshi NATSUME(IBRC), Yu SUGIHARA(The Sainsbury Laboratory), Hiroaki KATO(Kyoto Univ.), Akira ABE(IBRC), Kaori OIKAWA(IBRC), Motoki SHIMIZU(IBRC), Kazue ITOH(IBRC), Mai TSUJIMURA(Ryukoku Univ.), Toru TERACHI(Kyoto Sangyo University), Toshiyuki SAKAI(Kyoto Univ.), Atsushi OTA(Kyoto Univ.), Ryohei TERAUCHI(Kyoto Univ.)

性は遺伝的多様性を創出する根幹であり、性決定機構の解明は生物学における重要な課題である。被子植物の約6%を占める雌雄異株植物は、雄と雌が別個体に分かれており性染色体をもつ。雌雄異株植物における性染色体および性決定機構は、分類群ごとに独立に進化したと考えられており、これまで属ごとに異なる性決定因子が明らかにされてきた。しかし、1,000属近い雌雄異株植物における性決定因子の多様性やそれらの進化過程は十分に解明されていない。そこで、属内に多様な性決定型をもつヤマノイモ属に着目した。ヤマノイモ属では性決定因子の獲得や性染色体の転換が複数回起こったと予想されている。本研究では、最も分岐の古いグループに属するオニドコロ(Dioscorea tokoro)を対象に性決定候補因子を特定することを目的とした。

ハプロタイプ別のリファレンスゲノム構築と交配集団における連鎖解析から、性決定型がXY型であり3番染色体が性表現型と有意に関連していることが明らかになった。加えて、X染色体とY染色体は中央付近が分化しており、それぞれX染色体特有の領域とY染色体特有の領域をもつことが明らかになった。これらの領域は、ペリセントロメア領域周辺に位置することから、組換えが起こりにくい領域で性決定領域が形成されたと考えられる。さらに、トランスクリプトーム解析により、Y染色体特有の領域に位置し雄花形成初期に発現が高い性決定候補因子BLH9HSP90を特定した。BLH9は雌機能発生の抑制、HSP90は雄機能発生に必要な因子である可能性があり、これら2遺伝子がY染色体特有の領域に位置し、X染色体には位置しないことから、XY性決定型のオニドコロで雄花と雌花が形成されると考えられる。今後は多様な性決定型をもつヤマノイモ属で性決定基盤の解明をさらに進めることで、多様な性決定因子の進化過程を推定する。


日本生態学会