| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) J01-08  (Oral presentation)

オヤマノエンドウー根粒菌共生系の系統地理学的解析と共生能の評価
Phylogeographic analysis and cross-inoculation assay of Oxytropis-rhizobia symbiosis

*西川いぶき(信州大学), 池田啓(東京大学), 髙梨功次郎(信州大学)
*Ibuki NISHIKAWA(Shinshu Univ.), Hajime IKEDA(Tokyo Univ.), Kojiro TAKANASHI(Shinshu Univ.)

日本の高山植物の多くは、第四期更新世・氷期に周北極地域から日本に侵入し、間氷期に国内の冷涼な高山帯に隔離されたものの残存種であるとされている。本研究で対象とするOxytropis japonica(オヤマノエンドウ)も周北極由来のマメ科高山植物であり、Mesorhizobium属根粒菌と共生し根粒を形成する。マメ科植物は、大気中の窒素を固定してアンモニアを合成し宿主に供給する根粒菌と共生することで、貧栄養土壌でも分布を広げることができる。見返りとして根粒菌はマメ科植物から光合成産物を受け取ることで、2者は相利共生の関係を築いていると言える。オヤマノエンドウは根粒菌と共生することで、北海道の大雪山や長野県の木曽駒ヶ岳、山梨県の北岳など限られた高山帯の厳しい環境に適応していると考えられている。一般的にマメ科植物と根粒菌はある程度厳格な宿主特異性を有しており、その一部は根粒菌が持つ共生遺伝子クラスターによって決定される。マメ科植物の宿主特異性に関する研究は活発だが、高山帯のマメ科植物と根粒菌についての報告はほとんどない。本研究では、各山域に隔離されてきたオヤマノエンドウの宿主特異性について明らかにするために、GRAS-Diを用いたオヤマノエンドウの系統解析と、オヤマノエンドウを含むOxytropis属から単離された根粒菌のゲノム比較および各山域のオヤマノエンドウへの接種実験を行った。オヤマノエンドウは、最終氷期最盛期に北海道と本州の2系統に分岐し各山域に定着したと推測された。また、今回対象としたOxytropis属から単離された根粒菌は共生遺伝子クラスターを高い相同性でコードしていた。さらに、オヤマノエンドウは他山域のオヤマノエンドウおよび、他のOxytropis属から単離された根粒菌を接種すると機能的な根粒を形成した。


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