| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) J01-09 (Oral presentation)
盗葉緑体現象は、宿主(捕食者)が捕食した藻類の葉緑体を残し、一時的な光合成能を獲得する現象である。この現象では、葉緑体が一時的にしか維持されないため、永続的な共生体(葉緑体)獲得に至る進化の途中段階と考えられてきた。その一方で、近年の系統解析や分類群間の維持能力の多様性は、盗葉緑体現象が必ずしも共生への過渡的状態ではないことを示唆している。それでは、なぜ宿主は藻類を永続的に維持せず、また完全に消化もしない、中途半端な盗葉緑体系にとどまるのか。葉緑体の一時的な維持がどのような条件で進化するのかを明らかにすることで、捕食から共生の成立、永続化に至る多様な宿主-藻類関係の理解につながると期待される。そこで、本研究では、捕食、盗葉緑体化、共生を宿主による消化の程度の違いとして表現した数理モデルを構築し、盗葉緑体系の進化条件を導出した。特に、宿主が藻類を維持して長期的に養分を得ようとしても、藻類側の抵抗性が高いと、維持コストが上昇し、宿主が藻類の永続的維持を諦めて部分的な消化に転じうると予想される。そのため、宿主の消化戦略だけでなく、被食者である藻類の抵抗性(消化耐性など)との共進化に着目し、このような宿主-藻類間の相互作用により、永続的な共生系ではなく盗葉緑体系が進化的に安定化する状況を検討した。