| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) J02-02  (Oral presentation)

花の雌雄差と花蜜内微生物群集 ; 生育地と年による違い
Sexual dimorphism in flower and nectar microbial communities: Variation across habitats and years

*柴田奈穂(神戸大学)
*Nao SHIBATA(Kobe Univ.)

種間相互作用が生物群集に与える影響は、環境条件や種内変異を介して複雑に変化する。種内変異の中でも性的二型は、種間相互作用を介して群集構造に影響を与えることが明らかになりつつある。しかし、性的二型が群集に与える影響が環境条件によってどのように変化するかについては、未だ明らかになっていない。
 本研究では、雌雄異株植物ヒサカキ(Eurya japonica)を対象に、花の雌雄と花蜜内真菌群集の関係がヒサカキ生育地や年によって変化するかを明らかにすることを目的とした。兵庫県神戸市において2023年から2025年にかけて花蜜を採集し、培地培養により真菌の出現頻度およびコロニー数を評価した。真菌の移入や移出における訪花昆虫の影響を検証するため、袋掛け実験を行った。また、和歌山県古座川町で行われた先行研究の結果と比較を行った。
 その結果、神戸市では真菌の出現頻度およびコロニー数が雌花で一貫して高かったのに対し、古座川町では雄花で高く、花の雌雄差と花蜜内真菌群集との関係は生育地間で逆転していた。また、神戸では年による大きな変化は認められなかった。
 一般的に花蜜中の真菌群集は、(1) 昆虫や雨風による移入、(2) 花蜜環境での増殖、(3) 送粉者による吸蜜などに伴う移出という3過程によって規定される。だが、本研究から、これら3過程の相対的重要性がヒサカキ生育地の環境条件に応じて異なることで、雌雄差が群集に与える効果の方向性さえ変化しうることが示された。したがって、本研究は性的二型という種内変異が、環境依存的に生物群集へ影響を及ぼすことを明らかにした。


日本生態学会