| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) J03-05  (Oral presentation)

クズの花粉サイズは、標高・緯度・開花フェノロジーによって異なるか?
Do pollen sizes in Pueraria lobata vary along altitudinal and latitudinal gradients and with flowering phenology?

*中村結和, 鈴木準一郎(東京都立大学)
*Yuna NAKAMURA, Jun-Ichirou SUZUKI(Tokyo Metropolitan University)

 植物の繁殖に影響をおよぼす環境要因は多い。栽培種は花粉形成時の温度感受性が高いことが明らかになってきた。一方、野生種の花粉形成に対する温度の影響の知見は乏しい。そこで、日本在来のクズ Pueraria lobataを用い、開花日や生育地点の標高、緯度と花粉サイズの関係を解析した。さらに、採集地に最も近い地域気象観測システム(AMeDAS)の気温データを用い、気温との関係も調べた。
 クズの総状花序では、毎日3~5花が開花する。同所的に生育する8個体から、9月の異なる3日間に合計632花を採集し、各花の花粉サイズを計測した。また、開花15日前から開花当日まで毎日の気温と花粉サイズの関係を解析した。次に、異なる標高の7集団で合計23個体75花を採集し、各花の花粉サイズを計測し、標高との関係を解析した。さらに、東京都立大学牧野標本館収蔵の開花期のクズの腊葉標本42点から1花ずつを採集し、各花の花粉サイズを計測し、緯度との関係を解析した。
 同所的に生育する個体の調査から、同一個体でも開花日によって花粉サイズは異なり、そのサイズは花粉形成期とされる開花10日前の最高気温に依存し、開花10日前の気温が高いほど花粉サイズは大きかった。また、標高の異なる生育地点から同じ日に採集された花粉のサイズは標高と共に減少した。このサイズの減少は、気温の逓減を仮定すれば、同所的に生育する個体で見られた花粉サイズの温度への応答と矛盾しなかった。標高の違いによる温度変化は、花粉形質の違いを介して、種子生産および個体群動態に影響する可能性がある。腊葉標本の調査では、北緯や標本採集の10日前の気温に依存した花粉サイズの有意な変化は見られなかった。クズの花粉サイズは、花粉形成過程における特定の短時間の気温に影響される可能性を、本研究は初めて示した。


日本生態学会