| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) J03-08  (Oral presentation)

雌雄異株植物の結実に花粉の質的制限は生じるか?
Does qualitative pollen limitation occur in seed set of dioecious plants?

*星野佑介(東北大学), 小田中一浩(東京学芸大学), 山本涼介(東京学芸大学), 牧雅之(東北大学), 堂囿いくみ(東京学芸大学)
*Yusuke HOSHINO(Tohoku University), Kazuhiro ODANAKA(Tokyo Gakugei University), Ryosuke YAMAMOTO(Tokyo Gakugei University), Maki MASAYUKI(Tohoku University), Ikumi DOHZONO(Tokyo Gakugei University)

動物媒花の繁殖成功は,受粉する花粉の量と質の両面に規定される。他家受粉が必須な雌雄異株植物では,受粉する花粉の量が不足して結実が制限される量的制限を受けやすく,花粉の組成や稔性に起因する質的制限は生じにくいと考えられてきた。また一般に,夜行性のスズメガ媒花は送粉者の訪花頻度が低いため,強い量的制限下にあると予想される。本研究では,雌雄異株のスズメガ媒花であるカラスウリ(Trichosanthes cucumeroides, ウリ科)を対象に,関東の3箇所の自然集団(小平,黒川,嵐山)で3年間にわたり花粉制限の有無を調査した。
自然受粉時と人工受粉時の結果率(果実数/開花数)を比較したところ,全集団・全年度において人工受粉時に結果率が高くなり,花粉制限があることが示唆された。一方,果実あたりの結実率(種子数/胚珠数)は,集団・年ごとに変動し,人工受粉時に必ずしも高くなるわけではなかった。よって,自然受粉時でも果実ができた花では,種子生産を飽和させるのに十分な花粉が供給される場合もあることが示唆された。さらに,自然受粉後の雌花の柱頭を採取し,花粉の付着の有無を調べて受粉率(受粉花数/処理花数)を評価した。その結果,黒川・嵐山集団では受粉率が人工受粉時の結果率を下回っており,果実形成が花粉の量に依存する量的制限の状態にあることが示唆された。しかし,小平集団では,受粉率が人工受粉時の結果率を上回っており,受粉しても果実を形成しない花が存在することが示唆された。
以上の結果より,本種は受粉機会の不足による花粉の量的制限下にあるものの,その制限は種子形成段階ではなく,主に果実の形成段階に作用していることが明らかとなった。また,一部の花が受粉しても結実に至らない要因としては,花粉の質的制限が生じている可能性が考えられ,今後さらなる検証を要する。


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