| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) J03-10 (Oral presentation)
ササは地下茎による長い栄養成長の後、広範囲で一斉に開花・枯死し、実生により更新する。一方、一斉開花とは異なる年に個体の一部が開花する「小面積開花」は、結実率が低いため実生更新に寄与しないと考えられてきた。しかし、小面積開花後の実生発生に着目し、その繁殖成功度を定量的に評価した研究はない。本研究ではササ属チマキザサ節を対象に、一斉開花と小面積開花における開花・結実・実生発生の各段階で繁殖成功度を比較し、更新に影響を及ぼす要因を検討した。
調査は、2023年に一斉開花(北海道5集団)および小面積開花(北海道・秋田7集団)した集団を対象に行った。一斉開花集団では多数のクローンが混在して開花していたのに対し、小面積開花では少数のクローンが局所的に開花していた。結実率(花序あたりの結実数/総小花数)は小面積開花集団で有意に低かったが(一斉開花55−60%、小面積開花0.6−15%)、花序密度が高い場所ほど結実率が高かった。翌年、小面積開花の5集団で実生の発生が確認されたものの、その発生密度や2年目までの生存率は一斉開花集団に比べて低く、特にリター層が厚いところで密度が低くかった。2年目の稈長に有意な差は認められなかった。
野外における更新過程は光環境による影響を強く受けることから、共通圃場実験を行い、実生の発生率と成長速度を比較した。発生率は一斉開花集団(65−85%)に比べ、小面積開花集団(20−60%)で低かったが、集団間でばらつきが見られ、重量が大きい種子ほど発生率が高かった。2種類の光条件(遮光率:50%、94%)を設定し、1年間の成長速度を比較したところ、実生の成長速度は光条件により有意に異なったが、開花様式による差は認められなかった。
小面積開花は一斉開花に比べて種子生産量や実生の発生数は極めて少ないが、発生後の初期成長に大きな違いはなかった。小面積開花も、一部の実生が生存し続けることで、更新に寄与する可能性が示唆された。