| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K02-08 (Oral presentation)
動物被食散布では、種子は多くの場合、散布者の糞に含有された状態で散布される。糞には、動物の腸内に由来する多様な微生物(糞内微生物)が存在しており、種子の発芽や発芽後の実生の生育に様々な影響を及ぼすと考えられる。また、糞内微生物の組成は、果実などの散布者の採食物によっても変化することが知られており、動物被食散布における微生物の影響は散布者の採食物によっても異なる可能性がある。そこで本研究では (1)糞内微生物が種子の発芽と実生の成長に与える影響、(2) 果実の採食の影響、(3)種子の発芽や実生の成長に影響する微生物の推定、により糞内微生物が散布後の植物に与える影響を検討した。実験にはリンゴ属のズミとズミの主要な散布者の1種であるタヌキの糞を使用した。2023年に樹上より採取した種子を、コントロール(種子のみ播種)、糞処理(果実糞N = 32、非果実糞N = 28)、滅菌糞処理の条件で播種した。その結果、果実糞とともに播種した処理では、コントロールと滅菌糞処理に比べて発芽が約15日早く、樹高が約8%高かった。実験に使用した糞の微生物叢は糞の内容物間(果実糞vs非果実糞)で異なり、また、発芽時の土壌微生物叢も処理間だけでなく糞の内容物間でも異なっていた。Piecewise SEMによる各微生物の発芽速度への効果の推定により、果実糞を設置した土壌に特異的な微生物が種子の発芽速度を促進することが示唆された 。実生の根内の微生物叢は処理間で異なり、糞処理特異的な微生物が実生の成長を促進する可能性が示された。これらの結果から、ズミを採食した際の糞や糞内微生物は、土壌や根においてズミの成長を促進する微生物叢を形成することが示唆された。動物被食散布による種子散布の成功には糞内微生物が重要な役割を果たしている可能性がある。