| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K02-09 (Oral presentation)
特定外来生物オオハンゴンソウの侵入は、国立公園が保全すべき固有の生態系・景観・管理目標を根本から揺るがす課題である。日光国立公園においては現在、ボランティアや企業、行政などの多くの主体がオオハンゴンソウをはじめとする外来生物の駆除活動を実施している。
本研究は、日光国立公園菖蒲ヶ浜地区のスキー場跡地において、ニホンジカによる強い採食圧があるにもかかわらず、成立している大規模なオオハンゴンソウ群落に着目した。既往研究によるとオオハンゴンソウは不嗜好性植物とされてきたが、筆者らの先行調査により、本研究対象地では、オオハンゴンソウの採食痕が広範に確認されており、ニホンジカの嗜好性が変化しつつある可能性が認められた。このため、野外に岩塩設置区・無処理区・塩水散布区を設け、それぞれにトレイルカメラを設置し、ニホンジカのオオハンゴンソウに対する摂食行動を観察し、摂食嗜好性を分析評価した。
その結果、全ての試験区において、周囲の餌資源が減少する夏季に、オオハンゴンソウが代替餌として利用される状況が確認された。シカの来訪頻度とオオハンゴンソウの採食行動は、塩水散布区で最も増加し、塩分散布が嗜好性を高める誘因となることが示された。オオハンゴンソウの摂食部位は葉がほとんどを占めていたが、子ジカについては葉に加えて頭頂部まで採食する傾向が認められた。以上により、オオハンゴンソウに対するニホンジカの摂食嗜好性は、塩水散布により変化させることができることを示した。子ジカによる学習等も加え、ニホンジカの採食嗜好性が変化すると、特定外来生物オオハンゴンソウの抑制管理にもつながる可能性があると思われる。