| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K02-10 (Oral presentation)
熱波は、例年に比べ異常に暑い期間が数週間以上続く現象であり、近年その頻度が増加している。植物にとって重要な送粉者であるハナバチはその影響を受ける。ハナバチは、花形質と報酬量を連合学習し、採餌コストを抑え効率的な採餌を行う。しかし、高温下では体温調節による生理的制約が増大し、採餌コストが高くなる可能性がある。また、近年高温がハチの記憶や学習に影響を与えることが指摘されている。しかし、自由飛行下で複数の花タイプを与え、熱波がハチの学習を介して、花選択に与える影響を明らかにした例はない。
本研究ではクロマルハナバチを用いた屋内実験により、熱波が採餌行動へ与える影響を評価した。白色花序での採餌を学習させた後、報酬量の異なる3色(水・黄・青、低報酬から示す)の人工花序を適正環境である27℃と熱波を模した37℃で採餌させ、花序選択、採餌時間、採餌効率を比較した。
27℃環境では、白色に近い水色花序から訪問し、やがて水色と青色の2色を採餌するようになった。また、採餌バウトが増えるにつれて、訪問花序数、採餌時間は減少し、採餌効率は高まった。一方、37℃環境では水色花序から青色花序への移行が遅れた。さらに休憩時間が増加し、採餌効率は27℃環境に比べ低かった。これらから、ハチは学習結果と移動距離を考慮し、時間ともに青色系花序を選択するようになったと考えられる。37℃環境では休憩の増加や色識別のミスにより学習が遅れた、あるいは高温により増加した新規花序の探索にかかる潜在的なコストを避けたため、花序の切替えが遅れたのかもしれない。
本研究は高温による生理的制約に加え、高温がハチの植物選択に影響を与え、採餌行動を変化させることを示した。こうした変化は、短時間で植物の報酬量の変化に対応する必要のある自然環境では、熱波はハチのエネルギー獲得に不利益を与える、また、植物の送粉効率に影響することを示唆している。