| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K02-12 (Oral presentation)
ツツジ科ギンリョウソウ属のギンリョウソウは、菌従属栄養植物で、光合成を行わずに菌類から栄養を得ることで、暗い林床で群生する。しかし、光の乏しい環境では昆虫の訪花頻度が低いという問題に直面する。多くの菌従属栄養植物は自動自家受粉を行うが、ギンリョウソウはマルハナバチによる送粉で受粉する虫媒花である。本研究はギンリョウソウ送粉戦略を明らかにするために、①送粉者の訪花頻度、②受粉様式、③植物体の紫外線反射スペクトル、④花サイズ、開花時期、個体密度が結実率に与える影響の解析を行った。
調査は2022~2025年の春に神奈川県厚木市の、イヌシデ、イタヤカエデ、コナラが優占する落葉広葉樹二次林の林床で行った。目視とインターバルカメラで送粉者のマルハナバチを観察したが、訪花頻度は極めて低く、一花の開花期間(平均約8日)に一度も訪花されない花もあると考えられた。人工授粉により結果率と種子の稔性を調べた結果、結果率は自家受粉で60%、他家受粉で41%、無処理で40%となり、各処理で種子稔性に差が無かった。分光器を用いて各器官の紫外線の反射率を調べた結果、反射率は花茎が最も高く、花冠の開口部前方は紫外線を吸収し、後方は紫外線を反射していた。結実を高める生態的要因を推定するために、応答変数を結実の有無、説明変数を花茎の長さ、開花日、シュート密度とし、一般化線形モデル(GLM)を用いた解析を行なった結果、シュート密度が結果率に正の影響を与えていた。以上の結果から、ギンリョウソウは送粉者の活動が少ない春の暗い林床で、紫外線反射率のコンストラストで送粉者を花の開口部に誘引し、高密度に群生することで視覚的な誘引効果をさらに高めていることが示唆された。また、自家・他家受粉いずれでも結実できる花序を高密度に配置することで、送受粉の効率を高める戦略をもつことが示唆された。