| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) K03-07  (Oral presentation)

ミツバチの放射性炭素と窒素同位体は都市の大気汚染を反映する
Radiocarbon and nitrogen isotopes in honey bees reflect urban air pollution

*兵藤不二夫(岡山大学), 門叶冬樹(山形大学), 丑丸敦史(神戸大学)
*Fujio HYODO(Okayama Univ.), Fuyuki TOKANAI(Yamagata Univ.), Atsushi USHIMARU(Kobe Univ.)

化石燃料の燃焼や土地利用変化といった人為活動の増加は、気候変動や生物多様性の損失を招いている。また、現在の社会を支える自動車などの内燃機関から放出される窒素酸化物は、窒素負荷の増加や大気汚染、酸性雨の原因となる。これら窒素酸化物の供給源を特定する方法として、窒素安定同位体が広く用いられている。これは多くの場合、化石燃料の燃焼に由来する窒素酸化物の窒素同位体比が、雷や山火事、土壌における硝化や脱窒など自然由来の窒素の同位体比に比べて高い値を示すことに基づいている。また、都市部における自動車の排気ガスが大気汚染に及ぼす影響の評価には、放射性炭素も用いられている。これは化石燃料由来の二酸化炭素の放射性炭素濃度が現代の大気中二酸化炭素のものと比べて非常に低い値を持つことを利用したものである。先行研究では、これらの手法を用いて都市部の人為起源の窒素汚染や大気汚染の状況を定量的に評価するために、大気性降下物の採取やコケ類、植物の葉など生物試料を対象にしている。しかしながら、窒素同位体比や放射性炭素を併用して、都市における大気汚染状況を調べた研究例はほとんどない。そこで本研究では神戸市周辺の複数地点において、ニホンミツバチとセイタカアワダチソウを採集し、その窒素同位体比と放射性炭素濃度と、採集地点の都市化率(周囲の建物割合)の関係を解析した。その結果、ニホンミツバチおよびセイタカアワダチソウの窒素同位体比は都市化率と正の相関を示した。また、これらの放射性炭素濃度は都市化率と有意な負の関係が見られ、特にニホンミツバチはより広範囲の都市化率との関係性を示した。本研究の結果は、窒素同位体比と放射性炭素の併用が都市大気汚染の評価に有効であることを示すとともに、ニホンミツバチが採餌活動を通じて周囲の環境情報を統合する良い指標生物となる可能性を示している。


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