| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) K03-09  (Oral presentation)

流域生態系の栄養バランスを診断するマルチ同位体統合モデル: リン酸酸素同位体の適用
Integrated multi-isotope model to assess nutrient balances in watershed ecosystems: Application of phosphate oxygen isotope

*石田卓也(広島大学), 尾坂兼一(滋賀県立大学), 三歩一孝(名古屋大学), 岩田智也(山梨大学), 陀安一郎(総合地球環境学研究所), 角皆潤(名古屋大学), 中川書子(名古屋大学), 小澤優介(神戸大学), 奥田昇(神戸大学)
*Takuya ISHIDA(Hiroshima Univ.), Ken'Ichi OSAKA(Univ. Shiga Pref.), Takashi SAMBUICHI(Nagoya Univ.), Tomoya IWATA(Yamanashi Univ.), Ichiro TAYASU(RIHN), Urumu TSUNOGAI(Nagoya Univ.), Fumiko NAKAGAWA(Nagoya Univ.), Yusuke OZAWA(Kobe Univ.), Noboru OKUDA(Kobe Univ.)

生物にとって必須栄養元素である窒素(N)とリン(P)の存在量、そしてそのバランスは生態系の生産性や富栄養化などの水圏の環境問題に直結する。しかし、実際の生態系におけるN・P代謝機能の詳細は未解明な点が多い。本研究は、供給源と代謝の情報を持つ硝酸およびリン酸(PO4)の酸素安定同位体を用いて、生態系のN・P代謝機能をin situで測定し、流域の栄養バランスを診断するマルチ同位体統合モデルを確立することを目指している。本発表では、リン酸-酸素同位体組成(δ18OPO4-Δ’17OPO4)を用いて、河川生態系におけるPの供給源の推定および代謝機能を評価する手法を検討する。
 調査は、琵琶湖流域において、集水域の土地利用、地質特性、集水面積が異なる22の流入河川を選定し、灌漑期と非灌漑期に実施した。
 河川中のδ18OPO4値は、灌漑期(14.4 ± 1.2‰)と非灌漑期(11.9 ± 2.1‰)で異なる範囲を示した。PO4の供給源(岩石、土壌、下水処理水、化学肥料)のδ18OPO4値は、9.7‰~22.5‰の範囲にあり、ほとんどの河川中のδ18OPO4値はこの範囲にあった。河川中のδ18OPO4値は流域に占める地質面積との間に有意な相関があり、生物代謝によって導かれる生物平衡値と河川中のδ18OPO4値は一致しないものがほとんどであった。これらの結果は、河川中のPO4は岩石から供給されており、その一部しか代謝されずに最下流まで到達している可能性を示唆している。一方、Δ’17OPO4分析は、生物代謝の影響が非常に強い河川が存在していることを示していた。以上のように、琵琶湖流域の河川はその特性によって生物代謝の程度が異なることが示された。今後、各供給源からの寄与率と生物代謝率を定量的に推定できるモデルを構築し、流域の栄養バランスを診断するマルチ同位体統合モデルを確立することを目指す。


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