| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) K03-10 (Oral presentation)
動物は生態系の中で消費者としての役割を果たし、食う食われるの関係を通じて他の生物に影響を与えるのみならず、排泄を通じて物質循環にも貢献する。動物の摂食および排泄に伴う有機物中の栄養塩の無機化は、生態系全体の物質循環にどの程度寄与するのだろうか。また、その寄与率はどういった環境条件で変化するのだろうか。本研究では、そもそも栄養塩が律速となっている貧栄養な環境では、動物の排泄による栄養塩の無機化が物質循環に果たす役割が大きくなるという仮説を検証する。
本研究では、特に河川生態系における物質循環の中で動物が果たす役割を評価するため、河川において一般に大きなバイオマスを占める底生生物の排泄による栄養塩無機化を河川の栄養塩取り込み速度と比較した。まず、非常に貧栄養な環境として知られるアメリカモンタナ州の氷河河川の二か所において季節を変えて四回、河川の栄養塩取り込み速度と底生生物による栄養塩無機化率の測定を行った。河川の栄養塩取り込み速度は河川に栄養塩を添加し、下流で採水することで栄養塩減衰率から推定した。また、底生生物による栄養塩無機化に関しては、個別の底生生物の栄養塩排泄速度を計測して、別途調べた底生生物密度にかけ合わせることで、底生生物全体からの栄養塩排泄率を推定した。これらの結果、アンモニアは取り込み速度は1e-5~1.2e-3 mol day-1 m-2 に対して無機化速度は1e-4~0.8e-3 mol day-1 m-2となった。 リン酸は取り込み速度は1e-4~0.5e-3 mol day-1 m-2 に対して無機化速度は1e-4~0.2e-3 mol day-1 m-2となった。全体に、河川の栄養塩の取り込み速度と同等の栄養塩無機化速度が推定され、河川における栄養塩無機化に底生動物が果たす役割が非常に大きいことが示唆された。本研究ではさらに、世界中で測定された栄養塩取り込み速度および底生生物による栄養塩無機加速度のデータのメタ解析から、貧栄養な条件では底生生物による栄養塩無機化の寄与が大きくなることを示した。