| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-04 (Oral presentation)
近年、生物多様性の損失を止め、自然を回復軌道へと導く「ネイチャーポジティブ」の実現が国際的に求められている。企業、自治体、地域社会などでもその重要性が認識されつつあり、取り組みが始まりつつある。しかし、「自然を回復するとは何か」「なぜ地域単位で進める必要があるのか」「自然の回復が地域経済にどのような効果をもたらすのか」といった基本的理解や関心は依然として十分ではなく、科学的根拠や経済的視点を欠いた活動も少なくない。従来の環境負荷低減や自然保護にとどまらず、自然の回復と価値創造を同時に実現する経済的・社会的視点を含んだ新たな取り組みが求められている。地域には、農林水産業、製造業、流通・観光業、教育・家庭など、多様な主体が存在する。これらを生態系と社会・産業を統合した流域・景観単位で捉える「ランドスケープアプローチ」により、自然環境の再生と地域の課題認識を結びつけることで、地域の活性化とレジリエンス(変化に適応し回復する力)の向上が期待される。
本手引き書は、こうした背景を踏まえ、ネイチャーポジティブの実践に向けた初動支援と、地域主体による継続的な取り組みの方向性を整理することを目的とした。具体的には「従来の環境対策との違いを理解し第一歩を踏み出す動機づけ」、「ランドスケープアプローチを基軸とした協働の促進」、「自然の回復を軌道に乗せるための段階的プロセスの提示」、「地域の理解を得ながら実行するための方法整理」、「自然と地域経済の好循環を生み出す社会移行への示唆」、を念頭に置き作成した。地域の多様な関係者が本提案を活用し、自然の再生を通じて地域価値を高め、持続可能で誇りある未来へと循環的発展(スパイラルアップ)していくことが期待される。
本研究は東北大学ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点と参画機関のアミタホールディングス株式会社との共同研究成果として報告される。