| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-05 (Oral presentation)
ミズゴケ湿原は高い生態系サービス機能を有し、特に泥炭による炭素貯蔵源として機能しているが、世界的に減少の一途を辿っている。そのため、ミズゴケ湿原の再生は急務であり、復元には次世代を見据えた科学的な地域・社会実装(地域政策・教育普及・生態系サービス)が不可欠となる。道南に位置する歌才湿原はミズゴケ植生に特徴づけられ、重要湿地(500)、自然共生サイト(30by30)、重要里地里山などに指定されている。しかし、ハイイヌツゲの侵入による湿原の劣化が著しい。
こうした状況を受け、本湿原の保全と地域教育を繋ぐ取り組みとして、札幌啓成高校・寿都高校・黒松内中学校の生徒とともにハイイヌツゲ除去実験を企画した。伐採実験開始前にその意義についてオンライン併用で講義を実施した。ついで、生徒22名と教員・院生13名を10班に分け、植物が地上部成長を開始していない2025年5月11日にハイイヌツゲの地上部を可能な限り除去した。伐採後、1–2ヶ月間隔で植生・伸長成長および環境(開空度・光・温度)を測定し、2026年1月31日には啓成高校で学習会を実施した。また、今回の取り組みは、地域の複数主体が協働する際に生じる調整課題を可視化する契機ともなった。これらの過程を通じて、中高大連携や教科横断的学習、科学的地域・社会実装、ネーチャーポジティブの実践を目指す点は関係者間で共有されていた。しかし、連携の経緯や役割分担が明確に整理されていたとは言い難く、継続的な地域実装に向けた体制づくりには課題が残された。最終目的は共通であるものの、そこに至る具体的プロセスや中間的目標について統一的な認識が十分に形成されておらず、生徒の「やる気」の高揚だけでは持続的な地域づくり・湿原管理には結びつかないだろう。本発表では、これまでの調査結果とそれを活用した学習会までの経過と課題を整理し、今後の継続的な実践に向けた論点を提示する。