| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-06 (Oral presentation)
伊吹山頂草原植物群落は、かつて牛のために大規模に草刈りが行われ、固有種、好石灰岩種、北方の種を多く含む「お花畑」と呼ばれる状態が維持されていた。草刈りがやんだ1960年代から遷移が進み、目立つ花が少ない群落が増えた。それを戻すため低木や強い草本を減らす管理が部分的に行われてきた。ニホンジカの採食が目立ち始めてからは、大型防鹿柵の設置(2014年~)や、他種の生育を抑えるアカソ・フジテンニンソウの引抜・選択刈取などによる管理が行われた(2015年)。本研究では、柵内のアカソ優占群落において刈取・引抜から約10年後の効果を検証し、柵内外の植生を比較した。
調査区は a引抜区、b選択刈取区、c柵内対照区、d柵外区の4区分で、各3m四方の調査枠2ないし3個で構成され、植物種ごとの被度を測定した。そこからSimpsonの多様度指数を算出し、2015年(管理前)・2016年(管理後)・2025年のデータを比較した。
a引抜区では10年間でアカソの被度が大幅に低下し、他種の被度増加により種多様度は最も高くなった。b選択刈取区ではアカソはやや増加し、種多様度は上昇した。c柵内対照区ではアカソが減少し、フジテンニンソウの被度が大幅に増加、絶滅危惧種は全体に被度が低下し、消失した種もあった。種多様度はやや上昇した。d柵外区ではアカソがほぼ消失し、マルバダケブキが急増するなど群落構造が大きく変化した。絶滅危惧種は2025年にはコバノミミナグサのみ残存した。種多様度は低下した。
アカソの一度の管理が10年後の植生構造にも大きく影響することが明らかとなった。また柵設置により、天然記念物指定区域80haのうち約20%の種多様性は保全されているが、残り80%の劣化が著しいことが検証された。