| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-07  (Oral presentation)

里山林床における下草刈りによる生態系の多機能性への影響
Consequences of understory mowing on ecosystem multifunctionality in Satoyama forests

*Ziyan CHEN(Yokohama National University), 岩知道優樹(東京都環境科学研究所), 山梨満里奈(横浜国立大学), Harsh YADAV(Yokohama National University), 有馬一(横浜市緑の協会), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Ziyan CHEN(Yokohama National University), Yuki IWACHIDO(TMRIEP), Marina YAMANASHI(Yokohama National University), Harsh YADAV(Yokohama National University), Toru ARIMA(Yokohama Greenery Foundation), Takehiro SASAKI(Yokohama National University)

【背景と目的】 里山林では、森林遷移の進行抑制や生物多様性の維持を目的として、下草刈り等の林床管理が行われる。これまでの研究により、管理が下層植生の多様性を高めることは知られているが、地下部の物質循環や生態系機能全体に及ぼす影響については、単一の指標での評価に留まり包括的な理解が進んでいない。特に、管理に伴う物理環境や生物群集の変化が、いかなる経路で生態系多機能性(Ecosystem Multifunctionality; EMF)に波及するのか、そのメカニズムは未解明である。本研究では、林床管理が物理環境および多栄養段階の生物群集を介してEMFに与える影響を、構造方程式モデリング(SEM)を用いて解明することを目的とする。

【方法】 日本の放棄されてきた里山二次林において、草刈り+リター残置区(MM)、草刈り+リター除去区(MR)、対照区を設け調査を行った。各区画において、環境要因および植物・節足動物の群集組成を測定した。また、生態系機能を「資源(植物バイオマス)」、「分解(地上・地下分解速度)」、「貯留(土壌C・N量)」の3つの次元で評価し、これらを統合してEMFを算出した。本研究では、林床管理が環境および生物群集を介してEMFに及ぼす直接・間接効果に基づくSEMにより解析した。

【結果と考察】 解析の結果、林床管理は土壌物理性を変化させ、植物および節足動物の群集組成に有意な影響を与えていた。これにより、管理が環境を介して高次栄養段階へ波及するボトムアップ効果が確認された。一方で、これら生物群集の劇的な変化にも関わらず、EMF全体への有意な影響は検出されなかった。本研究は、里山管理が生物群集の構造を大きく改変する一方で、その影響が生態系多機能性へと波及しない機能的抵抗性の存在を実証的に示したものである。


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