| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-08 (Oral presentation)
高層湿地は泥炭の分解が極めて遅いため炭素の固定機能が高く、また生物資源の面においても湿地に固有の生物が多いため生物多様性機能の面からも重要視されている。植生遷移や乾燥化などによって高層湿地の規模が小さくなっていることが報告されているが、それだけでなく野生動物などの踏圧影響も湿地衰退に影響している可能性がある。そこで、本研究では山形大学演習林にある高層湿地において湿地を代表するヒメミズゴケ群集に対して人為的に踏圧をかけることでミズゴケの光合成機能や伸長がどのように変化するのかを調べた。
湿地は融雪後7月末までは滞水状態にあったが、8月になると水位が低下し表層が水面から露出し、9月になると再度滞水状態になっていた。ヒメミズゴケの伸長時期は湿地の水分条件と一致しており滞水時期では伸長速度が高く、露出時期では伸長速度が低かった。滞水時期と露出時期にそれぞれ踏圧処理をおこなうと、滞水時期に踏圧を与えた場合には踏圧直後の伸長速度を減少させたが、元来伸長速度が低い季節である露出時期に踏圧を与えた場合には伸長への影響はみられなかった。ヒメミズゴケの生理機能への影響を調べてみると、コケ植物は気孔を持たないため光合成機能は含水比に依存していた。滞水時期に踏圧処理を行った場合には含水比への影響は見られなかったが、露出時期に踏圧処理を行うと含水比は低下した。
これらの結果から踏圧は滞水時期にはシュート伸長などの形態に負の影響を与え、露出時期には光合成などの生理に負の影響を与えることが明らかになった。ミズゴケは根を持たず個体の下部を枯死させながら上部が伸長しながら生育するため、本実験程度の強度の踏圧では個体枯死に至ることはないが、成長抑制によって衰退につながるおそれがあることが明らかになった。