| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-10 (Oral presentation)
砂浜海岸は,波浪および風による堆砂・侵食作用によって形成・維持される動的な生態系であり,その後背に発達する砂丘は,海岸砂丘植生の主要なハビタットとして重要な役割を担っている。しかし近年,沿岸域での開発や人為的攪乱の増加に加え,流域からの土砂供給量の減少や海面上昇の影響により,砂浜・砂丘の侵食が全国的に顕在化している。従来の研究では,汀線変化を指標とした評価が主であり,砂丘を含む三次元的な地形変化を広域的に捉えた研究は限られている。さらに,砂の供給源である背後流域との関係に着目し,侵食要因を定量的に評価した研究は少ない。
本研究では,砂丘を海岸砂丘植生のハビタットとして捉え,その体積変化に着目することで砂浜海岸の侵食実態を評価するとともに,砂の供給源である流域特性が砂丘の維持に与える影響を明らかにすることを目的とした。全国約20地点の砂浜海岸を対象に,航空レーザ測量およびUAV-SfM(Structure from Motion)により作成した数値標高モデルを用い,2時期の標高差分解析から侵食量および堆積量を算出した。さらに,砂丘の体積変化と流域特性(例えば,地形条件,土地利用など)との関係を統計的に評価した。
その結果,砂浜部では河川密度が高いほど砂の堆積量が増加する傾向が認められ,流域からの土砂供給量が砂浜地形の形成に寄与している可能性が示唆された。一方,砂丘においてはダム数が多い流域ほど侵食リスクが高く,ダムによる土砂供給遮断が砂丘縮小に影響していると考えられた。加えて,流域の農地面積割合の増加や森林の分断化が砂丘の侵食に影響している可能性が示唆され,砂丘部は砂浜部に比べて流域の人為的影響に対してより敏感に応答している可能性が示唆された。これらの結果は,流域特性が砂浜海岸の土砂動態に大きな影響を及ぼしていることを示しており,海岸砂丘植生のハビタットである砂丘の保全には,流域スケールでの管理が重要であることを示唆する。