| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) L01-11  (Oral presentation)

放牧の空間パターンによる節足動物相の変化とそのメカニズム
Grazing spatial patterns drive changes in arthropod assemblages and their underlying mechanisms

*王一勉(横浜国立大学), Wenhuai LI(Inner Mongolia University), Xiaoming LU(IBCAS), 佐々木雄大(横浜国立大学)
*Yimian WANG(Yokohama National University), Wenhuai LI(Inner Mongolia University), Xiaoming LU(IBCAS), Takehiro SASAKI(Yokohama National University)

 草原は地表の40%以上を占め、多様な生態系サービスを通じて20億人以上の生活を支えている。近年、世界的な天然繊維や食肉の需要増加に伴い、家畜頭数の増加が激しく、過放牧による生物多様性の低下が深刻になっている。この生物多様性の低下により、生態系機能や生態系サービスが悪化することも波及すると考えられる。
 先行研究では、主として放牧強度という単一要因に焦点に限られ、強度の増加に伴う悪影響のみを検証している。その上、これらの研究は植物を対象に偏りもあり、節足動物などより上位の栄養段階に位置する生物の知見が少なく、限られた研究においても関係性が一貫していない。
 生物多様性と人間活動の両立を目指す土地利用方式について農地や都市部ではlandsharingとlandsparingという2つの方法が提案されている。本研究ではこの概念を基づき、分散放牧と集約放牧という新たな放牧の空間パターンを提案した。これらの異なる空間パターンの操作実験プロットを用いて、3つの放牧強度と2つの土地利用パターン(分散放牧/集約放牧)の組み合わせが地表徘徊性の節足動物の個体数や多様性に与える影響を評価した。
 解析の結果により、分散放牧では節足動物の多様性・個体数に増加・維持する効果が見られず、対照的に集約放牧では節足動物の多様性・個体数を増加・維持することが明らかとなった。特に中程度の放牧強度では、集約放牧区で節足動物のγ多様性と植食者の個体数が高いことが示された。また、放牧の空間パターンと節足動物群集の関係には植物を介した間接効果があることが分かった。
 以上の結果から、半乾燥草原において節足動物保全を目的にする場合、特に中程度の放牧強度において集約放牧が有用である可能性を示した。この結果を用いて、将来的には乾燥地草原の生物保全への貢献が期待できる。


日本生態学会