| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-13 (Oral presentation)
東京湾は強い環境傾度をもつエスチュアリーである。人為的要因が大きく、適切な管理が必要とされているが、基礎となる底生生物群集の情報が不足している。国土技術政策総合研究所は2002年7月から毎月1年間、湾内の20地点において底生生物群集の定量調査を行った。今回新たに同様の調査を行い、20年前の調査データと比較した。
調査は、湾内12地点において2022年5月より隔月で3年間、SM採泥器にて底質を0.1m2採泥し、1mmふるいの残渣から底生生物の同定および個体数の計数を行い群集データとした。各種の個体数を対数変換したのち、サンプル間のBray-Curtis類似度を求め、群集組成のクラスター分けを行った。266分類群による363サンプルの解析の結果、11のクラスターに類別できた。
底生生物の群集組成は、季節と湾内の位置に影響されるものの、全体的により低密度の群集へと変化した。ゴカイ類の卓越する群集が広く分布するが、肉食性ゴカイ類を含む群集の減少傾向が認められた。11群集のうち3群集は20年前に多く、うち一つはシノブハネエラスピオ主体の高密度だが構成種の少ない単純な群集であった。一方、現在多く見られる3群集のうち2つは特に低密度な群集であった。湾奥部の船橋沖と湾口部の中の瀬周辺には両期間とも他地域と異なる組成の群集が認められた。木更津から富津沖では、種数の多い群集から、カタマガリギボシイソメ主体のやや単純な群集へと変化した。船橋沖の群集組成の変化について、環境要因7変数によるdbRDAを行ったところ、底層水温と表層NH4濃度の寄与が高く、20年で前者の値は増加、後者は減少していた。木更津沖の群集組成については、表層のNO2とNH4濃度、底質強熱減量の寄与が高く、前2者が減少、後者が増加していた。このように底生生物の群集組成について構造の変化があり、水質環境との関連が認められた。