| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) L01-14 (Oral presentation)
金属鉱業に由来する重金属汚染は世界各地の河川で確認されており、藻類や昆虫類、魚類など、河川生態系を構成する様々な生物に重大なリスクをもたらしている。河川では降雨時に、雨水による希釈や周辺の地質等に含まれる重金属類の流入によって重金属の濃度が時間的に変動する。しかし、重金属濃度の時間変動を明らかにした先行研究の多くは、熱帯・亜熱帯地域における極端な降雨イベント(例:乾季と雨季の違い)を対象としたものに偏っており、日本を含む温帯地域における日常的な降雨の影響については知見が少ない。また、降雨による河川の重金属濃度の変動は、周辺の土地利用形態によってその大きさが異なることも予想される。本研究では、関東地方のある休廃止鉱山周辺の河川において27日間の連続水質調査を実施し、周辺の土地利用形態が異なる複数の地点間で、重金属濃度の時間変動と降水量の関連を比較した。本調査地において地質的に存在量が多いと考えられる銅や亜鉛では、河川水中の濃度と採水前24時間の降水量との関連に地点間での違いがみられた。上流に鉱山の坑道が存在している地点において降雨による濃度の上昇が観察された一方で、上流に裸地が多い地点では降雨による即時的な希釈と考えられる濃度の低下がみられた。また、上流に森林が多い地点では降雨による濃度の上昇・低下のいずれもみられず、森林土壌の高い保水能力との関連が示唆された。降雨によって重金属類の濃度が上昇していた地点では、降雨後の数日間は平時の数倍から数十倍になっていたケースもあり、月ごとや季節ごとといった長いインターバルでの水質モニタリングでは、そのような突発的な高濃度曝露を捉えられない恐れがある。本研究によって、温帯地域における日常的な降雨であっても重金属濃度に顕著な時空間的バリエーションがもたらされることが明らかとなった。