| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) L02-01  (Oral presentation)

不完全な性認識がチョウの行動を規定する
Uncertain mate recognition shapes social behaviors of butterflies

*竹内剛(大阪公立大学), 村松大輔(奈良教育大学)
*Tsuyoshi TAKEUCHI(Osaka Metro. Univ.), Daisuke MURAMATSU(Nara Univ. of Edu.)

 チョウは鮮やかな色彩の翅を持つ種が多く、それが種認識や性認識に使われているとする主張がしばしば見られる。演者らは、チョウの性認識能力を調べた過去の研究を調査し、その立証能力を検討した。過去の研究の大半は、雌雄の死体(モデル)をチョウに提示して、モデルに反応した(近くを飛び回った)時間を計測しており、異性モデルに対する反応時間が同性モデルに対するそれよりも長いことをもって、性認識の証拠と見なしている。
 演者らは、このような実験から性認識能力(同性と異性を認識する)の存在は正当化できないと考えている。たとえば、チョウによる同様の反応差が大きな異性モデルと小さな異性モデルに対して観察された場合、その結果は配偶者選択の証拠とみなされていた。そうであれば、異性モデルと同性モデルに対する反応差も、配偶者選択のひとつと見なすべきである。この論理は、種認識能力(同種と異種を認識する)に関しても同様で、過去に種認識の証拠とみなされていた実験結果も、配偶者選択の証拠とみなすべきである。
 一方、チョウは近づいてくる物に対して逃避行動を示すので、危険物を認識することはできる。
 演者らはこれらの知見から、チョウには配偶者という認識カテゴリーと危険物という認識カテゴリーが存在し、そのレベルが対象に依って違うと仮定する枠組み(partner-predator continuum: PPC)を構築した。PPCによれば、チョウの動物間相互作用は、基本的に配偶行動のレベルと逃避行動のレベルの組み合わせで記述することができる。たとえば、オスどうしの「縄張り争い」とされてきた卍巴飛翔は、求愛行動の初期段階とみなされる。


日本生態学会